スタンフォードGSBの文化

スタンフォードに来て、予想以上に気に入っているものの一つに、ここのカルチャーがある。巷で言われているような "Entrepreneurship" 一辺倒ではなく、 "be an independent thinker" "become your own leader" といった個人の主体性を促す文化が強く、そこが気に入っている。勝手なステレオタイプとして、他の学校では同じ型にはめて競争させる(HBS)やみんなでワイワイ群れる(Kellogg、INSEAD)みたいな印象を受ける*1が、それとは全く違った印象をスタンフォードは出しているように思う。
まだ日が浅く、深い洞察はないかもしれないが、現時点で思う、GSBカルチャーについて書いておこう。


そもそも文化とは
Strategyのクラスでも触れていたことの、自分なりの解釈:(企業)文化というのは、組織の中の行動の是非を示し、構成員の行動を制御するモノサシのようなものである。行動の是非を判定するという意味では Values とも似ているけど、それよりも微妙な小さな行動に影響するのが文化、と言えるかもしれない。
MBAでも、おそらく学校によって、「やった方が○○校っぽい」とされる行動や、「○○校ではよく思われない」行動があると思う。それを規定するものの一つが文化だと思う。


GSBの文化とされているものは(例)

  • Collaborative: 互いの足を引っ張りあうのではなく、協力しあってみんなで成功する。他の学校では、テスト前にノートが盗まれる(!!)といったことがあるらしいが、スタンフォードではむしろ、学年全体に非常に整ったノートが全体メーリスやFacebookで回覧されるほど。これじゃテストで差がつかないんじゃないか、とすら思う
  • Grade nondisclosure「成績非開示」。これは、どういうことかというと、「自分の成績について、第三者には絶対に公言しない」というもの。たとえそれば卒業後の就職の面接官であっても、遵守されるべきものである。一部の成績優秀者(上位10%とか、その他数名の優秀者)は公表されるが、それ以外の人についてな、GPA(評定の平均)はおろか、「上位50%でした」「○○の授業はよくできました」といった情報も開示してはいけない。また、この原則は、校則に刻まれているわけでもなく、生徒の間で代々受け継がれてきた「伝統」であり、いわゆる強制力はない。それでもスタンフォードGSBでは相当強く遵守されている。一部の企業の面接官が、非開示の原則を知っていながら生徒の正直さを試すために、敢えて成績についての質問をする、と言われているくらいだから驚きだ。
  • FOMOに流されない:FOMO = "Fear of Missing Out" 「ついていけてない恐怖症」かな。毎日、キャンパス内外、オフィシャル・プライベート含め数多くのイベントがあり、到底カバーしきれない。○○のパーティーに行かなければみんなの話題についていけないのではないか、という強迫観念のことを茶化してFOMOと呼んでいる。ここでは、みんながこれを合言葉に、「FOMOに負けるな」「行きたくないものに流されて行く必要はない」と、「他の人の動きに流されず、自分の道を歩む選択をすればよい」という学びを日々、強化している。


文化の自身への意味合い - "be my own leader" を促す環境
『400人弱の生徒の中で、「主要な」パーティーに欠かさず出て、いかにもMBA謳歌しています、といった感じを醸し出しているのは、せいぜい10%くらいじゃないだろうか』とクラスメートと話した。そういう人は他の人よりも目立つから、実際より多いように思うが、実際はかなり少数だと思う。目立たないが、自分の興味がどこにあるかを真剣に問い、自分と本当に気の合う数人の仲間を探している人が多いのではないか。
学校とはいえ、授業の成績は数ある評価軸の一つにしかすぎず、それを重視するかしないかは自分次第。キャリア選択ではEntrepreneurshipやNon-profitなどの幅広い選択肢が身近に見える環境で、コンサルや投資銀行など「安易」な道に流されないで、とはいえ流されてPassionもないのに起業するのでもなく、自分の道を考える必要に迫られる。
「○○生はみんな××だ」といった発言を他校の生徒や関係者から聞くたびに、「同質性の押しつけ」に違和感を感じるとともに、スタンフォードでよかったと心から思う。
自分が優先する軸を見つけて行動する。他のモノサシに迎合する必要はない。Independent thinker - be my own leaderたれ。エッセイでは最初に「自分にとって最も大事なこと - what matters to you mostを問われるが、この学校が築き上げた文化によって、今もひとつひとつの行動の選択の裏には常にこの質問が問い直される。


Half Moon Bay のRitz Carltonに出かけたときの写真

*1:僕は他校の文化についてはかなり偏った理解しかないから曲解してるかもしれない