ヘッジファンドでのインターン

MBA1年目の2年目の間の夏休みでは、香港にあるヘッジファンドインターンをした。
日本市場における公開株を調べ、その会社の株価が中長期的に上がるか、劇的に下がるかを見極める、といった仕事だった。

もともと、投資に興味があったわけでは全くなく、どちらかというといい会社のビジネスや組織の仕組みなど、会社の中身に興味があった。一方で、果たして「投資をする」とか「株で稼ぐ」「他人のお金をマネジする」ということに自分が興味・情熱を覚えることができるのか、というのを体験してみたかった。

投資経験(PE、ヘッジファンドなど)がなくてバイサイドの仕事に就くのは一般的には難しいみたいだが、先輩の伝手もあり、インターンの機会を得ることができた。

ファンドによって投資手法などに色々と特色があるものだけど、やってみると、このファンドのアプローチ自体は好きだった。市場の大きなトレンドから、ビジネスモデル、会社の組織などを深く調べるだけでなく、消費者目線から、実際にユーザーにインタビューしたり、自分でミステリーショッピングをしながらビジネスを「診断」する。こういったプロセスや、その過程で得られる業界の知識や実際のプレイヤーとの会話、消費者インタビューから出てくる仮説などを考えて投資判断を見極めるストーリーにする作業は面白かった。

一方で、これを生業にするには、自分には「株」に対する情熱が足りない、この世界の人たちとは「臭い」が違うな、というのも分かった。
僕の世話をしてくれたファンドマネジャーは、同じスタンフォードの卒業生だったが、大学生の頃から株が大好きでファンドマネジャーになると決めて生きてきた人だった。すごく頭もキレて、会社についての話をしているとすごく刺激的であったが、株への「愛」という点で、僕とは全く違うなぁ、と実感した。


2年目に入り、金融系での名物授業である、その通称も"Investments" という授業を取っている。そこに出てくるスピーカーや生徒の多くは、卒業後に投資家の道を歩もうとしている人である。彼らについても、いろんな業界、事業、会社について奥深く分析して理解している点には刺激を受けるが、一方で「投資してリターンを稼ぐ」というミッション自体にはやはり生理的なレベルで共感しない、というか親近感が生まれない。「こういう業界をもっと好きになれたら、スキル的にはそれなりに向いている&お金ももっと稼げるのになぁ」と思ったりすることもあるけど、今のところはこの業界からは心理的な距離があるみたいだ。
一方で、この業界の人たちがどのように考え、意思決定をしているか、というのは、資本主義経済の中で仕事をする上で非常に大事だと思うので、それだけでもこの夏・秋の経験は貴重なものだと思う。


ちなみに香港という場所については、滞在期間も短かったのだが、一言でいうと、「結婚して住みたい場所ではない。ましてや子持ちでは」という印象だった。
人口密度・温度、湿度・空気の汚さなど、自分が家族とともに長期間住みたい場所ではないな、という強い印象を受けた。


このようにして、興味があるかもしれない、向いているかもしれない業界の仕事や住む場所を、リスクなしで実際に試して、自分に正直にやりたい、やりたくない、と判断できる機会があるというのは、改めて本当に恵まれていると実感した。ともすれば、金銭的な魅力などで何となく足を踏み入れてしまいそうな業界だからこそ、実際に垣間見て自分の中で「ワクワクする」仕事かどうかを正直に測ってみることで、より自分に正直な選択をすることができる、と思う。