design principles

冬学期の Electronic Business という授業*1の一環で、IDEO社のPartnerがゲストとして来た。
そこで講義していたのが、新しい商品のデザインを仕込む際の十カ条

内容自体は、すごく目新しいものでもなく、「まぁそりゃそうだろな」ってなもんだけど、正しいことはだいたいそう思えるもの。
自分が意識的に実践しようとしているか、はまた別。

これまで自分は、デザインというのはきっと得意ではなく、特殊な感覚やセンスが必要とされるアートだと思って諦めていた節があった。
もちろんその観点は強いんだけど、100%説明できない感性によるアートなのではなく、ある程度までは要素分解してアイデアだしや絞込みをすることができる。
実際に、授業ではこの原則に基づいて新しい携帯テレビ電話をどうデザインするか、というエクササイズをやってみた。
それを通じて、単なる食わず嫌いでデザインは自分の役割ではないと切り捨てないで、自分もやってみようと思わせてくれた。

単純ながら、目を開かせてくれたレクチャーだった。
自分のためにも、その十カ条を書き留めておきます。

  • Design for the spectator - 第三者に見えるようにせよ

 その商品を使っているところを、道行く他人が目にするように仕組む。そうすることで、実際に普及している数よりも、よりヒットしているように「見える」。iPodのあの白いイヤホンが最高の例。人に見えるところに仕掛けをする。

  • Grab attention appropriately - ただ目立とうとしてやりすぎない

Observability (見えること)とDesrability (ほしくなること)の間にはマイナスの相互作用もありうる

  • Map observability - 「観客」とのタッチポイントを網羅的にとらえる

 たとえば、通販の箱も、近所の人が見る可能性のあるもので、商品が潜在顧客に露出する機会の一つ

  • Simple & Consistent - 簡単に、統一感のあるメッセージを

 例: blu-ray: パッケージもロゴもイメージもすべて「ブルー」

  • Defy convention - 当たり前に終始せず、ぶっとんだアイデア
  • Invite intrigue - 謎めいた要素も入れ込む、興味を喚起する
  • Focus on visible bits - 見える部分により注力する

 同じくiPodの例で、潜在顧客に見えるのは、本体かイヤホンか?

  • Use other senses - 視覚以外の五感に訴える

 ネットワーク効果とは、すごく単純に言うと、「より多くの人が使っていることが、自分がその商品を使うことの価値を高める」(例:電話やファックス、Facebookなどなど)。爆発的な普及には欠かせないが、それよりも、それ自体が価値のあるものではなければ、そもそも一人目が買わない

  • Reinforce the link - 購買サイクルを強化する

 アクセス>サーチ>検討>購買>デリバリー (+カスタマーサービス) のループのどこへの効果を狙うのか。

やはり、内容自体にマジックがあるわけでない。
でも、こういう原則をしっかり頭に入れて、忠実に考えることで、より質の高いアイデアも出せるし、アイデアの価値についての検討もしやすくなる。
もちろん、感性も必要。アート&サイエンス。


改めて言いたいのは、これは僕にとっては意味のある授業だった、ということで、スタンフォードGSBやビジネススクールで一般的に学べることのリストに載ってくるものではない。
僕がビジネススクールに求めている学びの一つは、個人的に苦手だと思っていたことへの意識を予期せぬ形で変えてくれることで、それも数ある求めている学びの一つに過ぎないし、求めてもいなかった学びがあることに、最も期待している。

*1:Supply Chain Management という必修科目の Advanced版