実戦さながら?

1年の秋学期に、スタンフォードビジネススクールの生徒にとって転機になるような」と謳われるイベントがある。

Executive challenge と銘打たれたこの行事で、生徒は、『実社会で実際に活躍する卒業生と実戦さながらの真剣勝負を繰り広げる』ことになっている。

簡単に言うと、卒業生を相手に、実社会で起こりうる会議などの場面を想定したロールプレイを行うイベントである。

この日は卒業生にとっては懐かしいキャンパスに帰る同窓会であり、生徒にとっては軽いネットワーキングの場でもある。
生徒は全員スーツ着用で、若干緊張の面持ちで登校する。

予め別の Leadership Labs という授業で組んでいる6人のグループごとにチームとなり、その中から2人ずつペアを組み、ペアで1つのロールプレイを行う。
ロールプレイでは、自分たちの演じるキャラクターおよびそのミーティングの設定などがあり、与えられたデータなどからミーティングの戦術を考えてから臨む。
しかし、いざミーティングでは、予期せぬ情報やイベント(誰かが予想外の大反対意見を表明する、とか、与えられなかった情報により分析が覆る、とか)が起こり、それに瞬時に対応できるかも測られる。

趣旨としては、Leadership Labs で取り組んできた、「自分のリーダーシップを表出する術を広げる」といったトレーニング (例えば自分の強みをチームメイトからのフィードバックで認識し、それをより生かした発言・説得の仕方をする、とか)を実戦に近いところで活用しよう、というものである。

僕らのグループの『相手』は、だいたい20年くらい前の卒業生たちで、投資会社の創業社長、ベンチャーキャピタルのパートナー、コンサルティング会社の役員、などなど、確かに実社会で今後やりあうことになる人たちである。
それゆえに真剣に取り組むし、そこで得た成功・失敗の気持ちやフィードバックも、より強い意味を自分の中で持つようになる。


さて自分の場合はどうだったかというと・・・

ロールプレイ自体は割とうまくいき、いただいたフィードバックもまぁそうだろうな、といった感じ。
イベントの2ヶ月後となった今では、その内容は覚えているが、印象としては薄れつつある。。。

正直な感想、気づきとしては、

フィードバックについて:人や見ている視点によってぜんぜんフィードバックの内容が違う
各ロールプレイでは、実際に自分の相手役としてロールプレイに参加した卒業生と、同じ部屋で傍観している卒業生と、一人ずつ、合計8つくらいのフィードバックをもらうのだが、ミーティングに参加した人と傍観者の抱いた印象が全然違う。傍観者が、「あの仕草はちょっとアグレッシブ過ぎた」という仕草について、参加者は、「そう?俺は全然気にならなかった」と言っていたり。
ロールプレイとかフィードバックとかを教室でしていると、望ましい言動とか使うべきスキルが処方的に与えられ、ゆえに原点評価の視点から、自分の弱みを直そう、といったモードに陥りがち。だけど、実際に社会での人の反応はマチマチなんだし、だったら自分の強みをもっと尖らせて、それで唸らせればいいじゃないか、といった部分を実感した。強みを強みとして意識的に思うことで、より強くレバレッジしよう、と。

緊張度合い:仕事の方が大変
ある意味、「慣れた」状況で予想外に固くならなかった。これまで仕事で似たような緊迫したミーティングなどを多く経験しているので、緊張感を体が覚えている、という感じ。久しぶりに真剣にテニスの試合をしたような、懐かしい心地よい緊張感だった。「あー仕事(社会人)ってこんな感じだったな」という感じ。
どうせならガチンコファイトクラブとか松岡修造なノリで罵倒してくれれば印象に残るのに、とMな部分では物足りなかった。そりゃ卒業生にとっては、ミーティングで好き勝手できる楽しいイベントでしかないから、ドッキリで芸人にキレるような役をやれというのも無理があるか。実際にマジ怒りとかしたら生徒にも嫌われるだろうし、リクルーティングの観点からも望ましくないね。

ということで、転機には程遠いけど、ひとつのアクセントにはなるイベントだった。
何年後かに戻ってきて卒業生として参加したいものだ。